父と子とお土産のUX(好かれる場、避けられる場の分かれ目)
2020.11.16

父と子とお土産のUX(好かれる場、避けられる場の分かれ目)

ティラノサウルスになりたい

恐竜に夢中の息子。将来の夢は「ティラノサウルスになること」です。先日「パパのすきなキョウリュウかいたよ!」と絵をプレゼントしてくれました(タイトルの画像がそのときの絵)。ご覧のとおり、わたしはスピノサウルスが好きです。

そんな恐竜大好きの息子と、国立科学博物館に行ってきました。目当てはもちろん恐竜の化石です。友の会(年間パスポート)も二年目になり、息子にとっても定番の場所。家を出るときにはいつも、連れていく恐竜フィギュアをウキウキしながら選びます。

ドーンと鎮座する化石を眺め、恐竜の名前を連呼し、展示されているティラノサウルスのポーズを真似する息子。この嬉しそうな顔を見るだけで、一緒に来て良かったという満足感と充実感が胸いっぱいに広がります。

気持ちのいい秋晴れの空を眺めながら、屋上デッキでお昼をいただきました。そして最後にもう一度、ぐるっと恐竜コーナーをまわって帰路につくことに。しかし、大抵はここで大きな問題とぶち当たることになります……。

地震、雷、火事、グッズコーナー

博物館、水族館、動物園。その他諸々の観光施設には、グッズコーナーやお土産コーナーがつきものです。関連するぬいぐるみやオリジナルグッズ、なんとかクッキー的なお菓子など、見て回るだけでも楽しい場所です。

ただし、子連れとなれば話は別。物欲の権化となった子どもとの、戦いを覚悟する鬼門でもあります。子どもは必ず(必ず!)欲しいもの見つけます。大人から見ればイマイチに思うアイテムでも、欲しいモノは欲しい。けれど当然、いつもいつも買ってあげられるわけではありません。

旅行中なら次の移動に備えて急いでいる場合もありますし、遣えるお金にも限度があります。「ダメだよ」と言って「はい、わかりました」と承服するほど、子どもの物欲は生易しくはありません。

それ故に、「グッズコーナーの位置」の重要性(UX)を、毎度感じさせられるのです。

■ 特定の行動を強要するUXの不快さ

わたしが年間パスポートを持っている某水族館。そこはグッズコーナーを通らないと出口に行けない設計になっています。もちろん意図的にそう順路設計されているのでしょう。その結果……

グッズコーナーの入り口からレジまでがほぼ一方通行なので、コーナー内での回遊性が(子連れは特に)低い
購入後は出口に一直線。展示に戻ることができない(むずかしい)
グッズコーナーに「寄らずに帰る」という選択肢がない。そのため、多かれ少なかれ子どもとの(望まない)衝突が生まれてしまう

もちろんグッズコーナーに行くたびに、子どもと衝突するわけではありませんし、子も親も大満足で店を後にすることだってたくさんあります。ですが、どうしても入店前に「子どもが変なもの持ってきたらどうしよう」「むちゃくちゃ高いものを欲しがったらどうしよう」と心配してしまいます。

よくありますよね、「このイルカがいい!」と子どもが自分の体くらいあるぬいぐるみを持ってきて、値段を見て目が飛び出るやつ。「いや、それは無理……」となだめるのに苦労した経験があるのは、きっとわたしだけではないでしょう。

訪問を強制されるグッズコーナーは、施設側の「売らんかな」を感じてしまうのもあり、わたしにはUXがよくないのです。

■ ユーザーの意思を尊重しているか

ちなみに、恐竜の化石を見に行った国立科学博物館は、出口の横にグッズコーナーの入り口があります。訪れた人が、訪れたタイミングで、グッズコーナーに行くかどうかを選ぶことができる。つまり、子どもとの鬼門を「避ける(寄らずに帰る)」選択肢があるのです。

はじめて子どもを連れて入ったときは、(正直)感動しました。感動の根源には、これまで訪れた多種多様なグッズコーナーの手前で、わたしは親として緊張や不安を感じていたからに違いありません。そういった緊張や不安という負の感情から解放される場所であることも、わたしにとって国立科学博物館が居心地のいい場所である理由の一つです。

施設側の視点として「グッズ収入も確保したい」「営業機会を最大化したい」という狙いは理解できます。建物としてのレイアウト設計の制約もあるでしょう。ただ、利用者の高いUXがあってこそ、再来訪や口コミにつながるのではないでしょうか。

現在の完全予約制、人数制限をかけての施設運営は、今まで以上に苦労が多いことは想像に難くありません。そんな施設の応援になれば、という自分自身への説得もあり、今回は恐竜のぬいぐるみ(スピノサウルス)を購入しました(施設からの圧力のない、とても気持ちのいい購入体験でした)。

どんどん増えていく恐竜のお友だち、いつか息子の夢が叶うといいなと応援しています。

提供者側の都合で、ユーザーに特定の経験(エクスペリエンス)を強要させない。いいUXを与えることが、損して得取れにつながっていく。

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