2021年の振り返りと2022年に向けて(編集後記)
2021.12.29

2021年の振り返りと2022年に向けて(編集後記)

 今年はこれをやった。年末に胸を張ってそう言い切れる年は素敵です。あなたはどうでしたか?

UXジャーナルを運営する株式会社文殊の知恵(以下、「文殊」)は、まだ創業したてということもありますが、さまざまな新サービスを展開した、飛躍の年になりました。

主にインナー・ブランディングやインターナル・コミュニケーションと呼ばれる、社内コミュニケーションの改善や活性化を対象に、サービス開発を行ってきました。まだ成熟していない未開拓な領域ですが、どのサービスにも手応えと「文殊」らしさを感じることができ、たくさんの感謝の声をいただくことができました。

あなたの事業や会社にも、ヒントになるアイデアがあると思いますので、サービスの一部をご紹介しますね。

■インナーメッセージ・レター&動画

「社内文書は『読まれる』ことを前提にしているので、『読まれない』ことを前提にされた文章よりも、はるかに UX が低く、進化もしていない。」

ぼくらはこの課題の解決を試みました。「読まれないことを前提にされた文章」とは、一般的な広告であり、雑誌・書籍類などのエンターテイメント・コンテンツ(外部コンテンツ)です。

これら外部コンテンツは、文章も、映像も、日々競争にさらされ、UX は向上しつづけています。「読んでもらう」「観てもらう」ためのアイデアや努力がいたるところに存在します。

しかし、社内文章などの内部コンテンツは、「出す」ことが目的化しており、担当者が発信した後は、「読んでいない方に非がある」風潮。

テレワークが標準化し、これまで以上にビジョンやミッション(パーパス)の浸透、理解が重要視されるなか、社内メッセージの「質」は間違いなくライバルとの差別化・独自化要素になってきます。

「文殊」ではテキスト(メールやレター)だけで数百万円単価の商材を販売してきたコピーライターや、海外の大学で映像を学び、一流企業のプロモーションビデオの制作を行う映像クリエイターが、社内メッセージの企画、作成、発信をお手伝いしています。

依頼を受けた企業の社員さんも、これまでとは明らかに違うメッセージング方法に、驚きながらも新鮮さを感じ、興味を抱き、従来よりメッセージを積極的に受け取ってくれています。

もしあなたが社内でメッセージを発信する側にいるのなら、コピーライティングやセールスライティングについて学んでみるといいかもしれません。「いかに興味を引き、読んでもらうか?」が研究されている文章術には、読み手の UX を高めるヒントが必ずあるはずです。

■社内対話会

「学生のように同期の仲がいいのが当たり前だったのに、今年の新入社員はお互いに『敬語』を話していて愕然とした……」

社内対話会は、この相談からスタートしました。今年度の新入社員がよそよそしく互いに敬語で話していたのも無理はなく、コロナの影響で入社前に顔を合わせた回数はゼロ。入社後に一度だけ、だったのですから。

パソコンの CPU は、よく人間の脳に喩えられます。Core i9 など、たくさんの「脳」があるほどパフォーマンスが高くなる。たくさんの並列処理を同時に高速にできる……なんて説明を、聞いたことがあるでしょう。

しかしそれは、それぞれの「脳」が「つながっている」から意味があるわけです。独立して存在していては、連携も、相乗効果も生まれません。

組織でも同じです。どれだけ優秀な人たちが集まっていても、それぞれの優秀な「脳」に、それぞれが自由にアクセスし、能力を引き出すことができなければ、パワーは発揮されないのです。

こんな「もったいないパワーロス」が、いたるところで起こっています。同期はもちろん、上司や部下、別の部署の仲間など、タテ・ヨコ・ナナメ、縦横無尽に人間関係が構築されているほど、その会社の潜在的な知は底上げされていき、パフォーマンスに反映される。では、コミュニケーションが分断された現在、どうすればそんな状態を意図的にデザインすることができるのか……?

ぼくらが出した答えが「マニュアルに沿って進行する社内対話会」です。

詳しくは下記の記事に書きましたので、興味のある方はご覧ください。

『雑談マニュアルの有無で対話のUXはどう変わるのか』
『社内「対話会マニュアル」の具体的内容』

■だれも喋らない会議

 Zoom や Teams でのオンライン会議が市民権を得た2021年。しかし、会議の「進め方」もアップデートされているかといえば……そんなことはありません。

むしろ、せっかくリモート(非同期)でコミュニケーションやアウトプットができるようになり、生産性や効率性が劇的に向上しそうなものの、現実には黙って誰かが話すのを聞いている無駄な時間が増え、前よりも生産性は下がっているんじゃないか?……とも。

そこで、「文殊」メンバーが開発したのが『だれも喋らない会議』。これが、すごい。進行役以外、だれひとり一言も発することなく一時間なり二時間なりの会議を行うのですが、生産性も、満足度も、過去最高でした。

気になる詳細は note でまとめられているので、要チェックです。

『オンラインでもっとも生産性が高いのは、”だれも喋らない”会議(理論編)』
『オンラインでもっとも生産性が高いのは、”だれも喋らない”会議(実践編)』

■エンパシック・トーク

 先の「インナーメッセージ・レター&動画」や「社内対話会」、「だれも喋らない会議」にも共通しますが、現在の経営課題の根底には、コミュニケーション課題があります。

昔から言われていることですが、経営思考(プロジェクト思考)と現場思考(プロダクト思考)の間には大きな溝があり、経営サイドに現場を理解しろだの、現場サイドに経営を理解しろだの、口で言ったところで解決しません(ご存知のとおり)。

これらは「思考土台」の違いから発生しているもので、言い換えれば「優先される価値観の違い」です。

また、問題を複雑化しているのは「優先される価値観は、その時々で変化する」という事実です。これはプロジェクト単位でも、個人単位でも発生します。

では、どうするか?

この解決策として生み出したのが、「エンパシック・トーク」という対話フォーマットです。8つのステップを踏むことで、立場による思考の差を見える化し、共有理解することで、一段高い対話、解決策を見出すことができます。

2022年は「エンパシック・トーク」の実践・普及にも、(個人的に)力を注いでいきたいと思っています。こちらも詳細は『UXジャーナル』で追って発信していきますね。

最後に

 今年も一年、『UXジャーナル』をご覧いただき、ありがとうございました。今年は「文殊」メンバーの書いた記事が、実際に企業を動かし、UX の改善を促進したり(『UXのいい未来はたしかにつくれるのだと実感した話』)、まだ言えませんが『UXジャーナル』内での提案を、実際に採用したいというお声をいただいたりなど、想像以上に多方面に影響を及ぼしたメディアだったと自負しています。

秋以降は身近な「UX 事例」というより、未来の UX の進化や方向性を考える記事が多くなりました。

来年はさらに、UX を基軸にさまざまなアイデアや提案、実践レポートを出していきたいと思っています。どうぞ引き続き、楽しく学んでいただければ本望です。

ご覧いただき、ありがとうございました。良いお年を。

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