UXのいい未来はたしかにつくれるのだと実感した話
2021.09.22

UXのいい未来はたしかにつくれるのだと実感した話

書いててよかったUXジャーナル

 「新駅開店!」で話題になってから幾星霜。高輪ゲートウェイ駅には無人コンビニがあるとのことで行ってきました。店名は「touch to go」。レシートに記載された担当はAIさんでした。未来だ。


そんなJR東日本さんについて、過去にUXジャーナルの記事を書かせていただいたことがあります。


端的に言えば「OUT OF SERVICE」って貼り紙がイケてないよね、という(やや批判的な)記事でした。先日、その記事を読んでいた知人から「五反田のSTATION WORKに異変発生!」との連絡。早速訪れてみたのです。そこで目にしたのは、まぎれもないUX向上の跡でした。

世界のUXがあがった現場をみた


 一見同じような貼り紙ですが、中の言葉が変わってるではないですか!
「OUT OF SERVICE」が「Coming Soon」になっています!!

たしかにこの世界のUXは向上していたのです。少なくとも、この五反田駅構内の現場においては。

ああこれは嬉しいなあ、この貼り紙を見た人が、STATION WORKを使う日を楽しみにしてくれるといいなあ、そう思いながら、反射する自分の姿も気にせずに、スマホでパシャパシャ写真を撮ったのでした。ありがとうJR東日本さん。

変えるために動いてくれた人たちがいる

 この貼り紙の言葉が変わった裏側には、果たしてどんな人がどう動いてくれたのかなと帰りの電車に揺られながら考えていました。

一連の変化に関係してくださった方は、普段の業務でエンドユーザーに直接接点を持っていない可能性もあります。そもそも無人で提供されるサービスですし、さらにいえばここ五反田駅ではリリース前のタイミングです。ボックスを手配して設置工事をし、駅構内の管理をして、今のところユーザーとの接点を意識する人は少ないかもしれません。

実際のところはわかりませんが、とにかくJR東日本さんのなかにUXについて考える場が生まれ、そして手を動かしてくれた人がいることは事実。AIにはできない仕事とは、まさにこういうことですよね。それがとてもありがたいなあと思ったのでした。

製品やサービスを変えたりつくったりすることだけが仕事じゃない

 はてさて、自社サービスのUXをあげると言うのは、いったいどういう仕事なんでしょうか。製品やサービスを変えること、新規事業をリリースすることだけが自社サービスのUXを上げる仕事なのでしょうか。いやいや、そんなことはないはずです。

だってJR東日本さんがこの貼り紙を変えたところで、STATIONWORKのサービスにはなにも変化はありません。料金も場所もファシリティも変わりません。サービス開始の日が早まることだってありません。貼り紙を変える前とあとで、利用者が受け取るサービスはなんにも変わらないんです。

製品やサービスなんてのは、特に大企業では一朝一夕に変えられるものではありません。また変えられる実権を持つ人なんてほんのひと握りです。でも、貼り紙の言葉は変わりました。このJR東日本さんのケースからは、身の回りの言葉遣いを変えるだけでUXをあげられる、そんなヒントを学べるように思います。

「こういうものだから」を振りきって身のまわりのUXをあげる

 「貼り紙の言葉を変えたい」というアイデアが出たときに、「こういうものだから」と返されてしまうことだってあり得たはずです。実際に今回のケースにあったかはわかりませんが、そうしたプレッシャーを振りきるのって、意外と心理的なハードルがありますよね。

UXを上げる仕事っていうのは、決してサービスそのものを変えることだけじゃなくて、自社内の「こういうものだから」をひとつずつ見直していくというやり方もあるんだと思います。身の回り3メートルの人と一緒になって、よい仕事を小さくはじめること。その経験の積み重ねが、きっと世界のUXをあげていくのだと思っています。

UX上げるっていうのは、まず身の回り3メートルの人を大事にすることから

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