ブレイクタイム!コミュニケーション・ツールになるお菓子のUX比較
2021.03.31

ブレイクタイム!コミュニケーション・ツールになるお菓子のUX比較

お菓子に思い出あり、思い出にお菓子あり

 お菓子は好きですか? 甘党のわたしは、和菓子も洋菓子も大好きです。ごちゃごちゃしたお菓子コーナー、パン屋さんの甘い香り、ケーキ屋さんのディスプレイ、カフェで食べるデザート、どれも日常の愛すべきワンシーンです。

高校時代は、部活帰りに近所の和菓子屋さんに寄るまでがルーティンになっていました。和菓子は見た目もきれいです。ただ唯一、苦手ものもあります。シナモンです。子ども時代、シナモンスティックをチョコスティックと間違えてかじってしまった時の絶望感といったら……。

良いも悪いも、お菓子に思い出あり、思い出にお菓子あり、甘いものは日常に彩りを与えてくれます。

コミュニケーション系お菓子

 ポケットにアメちゃんを忍ばせている大阪のおばちゃんよろしく、ふと誰かにお菓子を渡す(貰う)といったコミュニケーション・シーンがあります。仰々しくはないけれど、ちょっとしたお礼や労いが込められていて。

そういった、誰かに渡す(貰う)タイミングでは、お菓子はただ「自分で食べる甘いもの」を超えて「誰かに渡すコミュニケーション・ツール」として機能しています。

ユーザー・エクスペリエンス的には、お菓子としての「機能やスペック(価格や味や食感など)」だけではなく、相手に渡すというコミュニケーション「体験」のデザインが求められている、とも言えるかもしれません。そんな、コミュニケーション系お菓子がいくつかあったので、それぞれ簡単に感想を書いてみたくなりました。

ケース1 キットカットbyネスレ


 とっても秀逸。秀逸ポイント1は、デザインが多様で使い勝手がいいこと。その上で秀逸ポイント2は、職場で使ってもらえるようなイメージで統一されていることです。

実際、私は職場で配った経験がありますが、驚くほどお菓子を渡すときのユーザー状況を理解しているなと感心しました。以下、具体的に気づいた点を列挙すると……

  • 【写真・右上】シンプルに書く場所が分かる。キットカット自体がある程度固くて面があるため書きやすい
  • 【写真・左上】メッセージが記入済。ペンを用意する必要がないのはありがたい。選択されている「ありがとう!」も汎用性が高さも秀逸
  • 【写真・下(裏面)】「お返しはいらないよ」の心遣いも素晴らしい。渡すときに一言添えるでも、机に置いておくでも成立するメッセージ

まさに「そう、これこれ!」が見事に表現されています。

ケース2 チョコパイbyロッテ


 定番中の定番。私にとってチョコパイといえばロッテ。個包装の中にメッセージを書けるデザインがあるのを知っていましたか? 写真左、ハートの中に「For」と書いてある場所です。ピンクのリボンハートにこのフォント、日常づかいよりは少しシーンや相手に「特別感」を与える印象があります。チョコパイで気づいたことは……

  • デザインはきれいでおしゃれ
  • チョコパイが円形で厚みがあるので、右下の部分は土台が空気になってちょっと書きづらいかも
  • チョコパイは繊細でもあって、強く書きづらい。筆圧が高い私はやや不安

ケース3 ミニスナックゴールドbyヤマザキ


 こちらは菓子パンの定番。スナックゴールドを小さくし、3個セットで売っています。裏面にはメッセージが書けるようになってました。「みんなで食べよう!」もいいですね。菓子パンなので、例えば小学生のスポーツクラブへの差し入れなどでも喜ばれそうです。ミニスナックゴールドについて気づいたことは……

  • 元々の包装の大きさもあり、メッセージを書くスペースが広い
  • 親しみやすいデザイン。かしこまってなくていい
  • ただメッセージ欄が裏面なので、存在に気づきづらいかも

“状況”を想像し“状況”を作り出す

 お菓子の包装にメッセージを書くスペースを設け、コミュニケーション・ツールとしての状況を作り出す。といっても「メッセージを書く場所を用意すればいいんでしょ」という単純な話ではないことは、すでにご理解いただけているはずです。

  • だれが、どんな場所で、どんなシーンで、どんな言葉を言いながら、渡すのか
  • 受け取った人はどんな場所で、どんな想いで包装を空けて、中のお菓子を食べるのか

それぞれのメーカーさんは、こうしたことに想いを馳せながら、先の商品(包装)をリリースしたのでしょう。一方で、これらを消費者側から推察する思考実験は、個人的には好きな部類です。加えるならば、どんなデータや調査を組み込んだのだろうか? 今後キャンペーンをするとしたらどんな可能性があるだろうか? といった妄想を広げることもできます。

 私自身、偶然手に入った3種を比較してはじめて気づくことがありました。それは……

  • メッセージを書かずに渡したら、受け取った人はどんな気持ちになるのだろうか
  • 受け取った人は、食べ終わった後どんな気持ちで空袋をゴミとして捨てるだろうか

こんな問いを持ち、あらためてケースに取り上げた写真を見ると、また違った見方ができそうですし、3つのケースの違いを比べてもおもしろくなりそうです。

UXを高めるには、ユーザーの「属性」だけではなく、ユーザーの「状況」をイメージすることが大事と言われます。ユーザーの「状況」をイメージする練習は、身の回りにあふれる、こうしたお菓子のパッケージを見比べることでもできるかなと思ったケースでした。

興味関心こそが、学びと実践のエンジン。日常にあふれているUX向上のヒントを見逃さずに、思考実験を楽しみましょう。

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