
リモートワーク in 駅ナカ
鉄道事業を営むJR東日本さんは、新規事業にも積極的です。2019年、つまりコロナ前から「STATION WORK」なるサービスを開始しています。駅の空きスペースに今風な電話ボックスを立てるというサービスで、エキナカでリモートワークが捗(はかど)るよ、というもの。
電車移動のスキマ時間にデスクワークができるのはありがたいです。喫茶店と違い、電話も気兼ねなくできます。なによりこのサービスがイケてるのは、webで利用状況が見られたり、予約ができたりするところ。せっかく行ったのに満室空振り、というリスクが解消されています。
コロナ以降は電車に乗ること自体が減ってしまった私ですが、なんと最寄駅に新たに「STATION WORK」が設置されているのを発見! 生活圏内にあったら使う機会があるかも、と期待しながらサービス開始を待っていました。
そんなある日、サービス開始前の「STATION WORK」に異変が。
期待の新人、使用不可
使用不可・OUT OF SERVICE……開業まで今しばらくお待ちください、ということですか。ふむふむなるほど、回送電車で見ますね。この電車はご利用できません・OUT OF SERVICE、って。
「でも待てよ。ここに使うのはないんじゃないの?」と、私は思ってしまいました。意味はわかる。わかるんです。これは”ただしい”言葉ですよね。現時点では使えないことを、正確に表しています。
ただ、これはサービスリリース前の告知です。この紙が訴求する相手は、サービス開始を楽しみに待っているユーザーのはず。なのに「使用不可」とはナニゴトか。
もしかすると「このデカイ箱はなんなの?」や「まだ使えないの?」といった問い合わせ、ともすればクレームがあったのかもしれません。であれば「まだ使えない」ことが一目でわかる必要があったのでしょうか。ピカピカのボックスに、いかにも後付けしたとわかる紙を貼ってまでして……?
私(ユーザー)にとってふさわしい言葉は?
この張り紙をみて「自分だったらどう書くだろう?」と電車に揺られながら考えてみました。たとえば「COMING SOON」はどうでしょうか。このサービスに期待している私(ユーザー)にとっては、こちらの方がしっくりきます。まだ使えない、という意味もわかるし、サービスへのワクワクはもう少しとっておいてね、という気持ちも込められているように思うからです。
ただしい言葉は、時にサービス提供者側の目線になってしまうのかもしれません。新規事業であればなおさら、これまで培ってきた経験や成功パターンが、もしかしたら今目の前にいるユーザーには通用しないかもしれない。そう思って常に学び直す姿勢を持ち続けることが、ふさわしい言葉を選ぶ一歩目なのかなと思います。
自分たちのサービスに期待している人を想い、その気持ちや感情に寄り添った言葉を選ぶ。ただしい言葉ではなく「ふさわしい言葉」を選べるように、自分も気をつけようと思いました。
おまけ
文句をつけたお詫びに、この文章は「STATION WORK」で書きました。Wi-Fiも飛んでいますし、良い感じ。……と思ったら、終了5分前にタイムアップの自動アナウンスが。
「ご利用時間は残り5分です。ご退室の準備をお願いします」
うーん、わかる。ただしい言葉だし、こういうものでしょう。でも、私にとっては追い出されるようでちょっとイマイチです……。ではどう言えば「ふさわしい」言葉になるでしょうか。電車に揺られながら考えてみようと思います。
ユーザーにふさわしい言葉を選ぶには、言葉の感度が必要。身の回りの言葉から、自分がどんな感情を受け取るか、気持ちを眺めてみましょう。