遭遇、ヘンなおじさん
どうも。UXジャーナルを運営する(株)文殊の知恵のボランチ、米川です。UXジャーナルを立ち上げ早2ヶ月。4日連続のイベントも終え、総勢20名を超えたスタートアップの取締役。
そんな僕の周りには最近、おじさん達が集まっています。
代表(藤野貴教)は「UXおじさん」というアイコラキャラに目覚めました。行く先々で打ち合わせする相手は、おじさん、おじさん。最近は「おじさんの緩め方」なんてセミナーを企画するおじさんにも出会いました。
そんな中でも、ひときわ怪しさと行動力を兼ね備えているおじさんがいます。しかも、三人組。その名も「三茶ジャパン」。
おじさんへの投資案件
さすがおじさん。恐ろしいネーミングセンス(エリア名×国名)。例えるなら「ミネソタUSA」や「釜山コリア」のレベル。ネーミングをツッコむと「いやいや、三茶から日本に羽ばたいていきたいんです!」と言われました。いいですね(?)
「三茶ジャパン」に出会ったのは、少しだけ知り合いだった(写真中央の)かじさんがきっかけです。先日、かじさんから約3ヶ月ぶりに連絡が来ました。
「お久しぶりです!おじさんがトゥクトゥク欲しいクラウドファンディングが明日までです!協力よろしくお願いします。」
……はい?
※トゥクトゥクはこんなの
散財させたのは…なに?
とりあえず、メッセージにあったCAMPFIRE(キャンプファイヤー)のリンクを読みました。そして……このクラウドファンディングに3万円も出し「三茶の安安で、おじさん三人組と食事ができる券」を購入しました。
女性と食事に行っても「ネット予約でTポイントが使えるか?」で頭がいっぱいの僕が、そんな行動をしてしまった(ハイボールで酔った勢いだったのかもしれない)。
むちゃくちゃな散財をしたなと思う一方で、なにかを始め、応援を集めたい人への学びがあるかもしれないと思ったのです。
「楽しそうにやっているから」が選択軸になる現代
応援といえば、登録者数100万人を超えるYouTuber。高級外車2〜3台分の広告収入を、毎月毎月稼ぐ彼ら彼女らは、なぜ支持されるのか。理由はさまざまでしょうが、周りの十代に聞くと、少なくない人数が「楽しそうにやっているから」と答えます。
何気ない答えですが、結構本質だと思っています。
三十歳の自分以下の世代は「ゆとり〜さとり世代」と揶揄され、怒りのエネルギーで他者をコントロールする=ダサい、という価値観で(良くも悪くも)育った節があります。加えて、あらゆるサービスの質は高まり、低価格でも素晴らしい機能とデザインを兼ね備えたものが、ネットで明日には手に入る時代です。
そこで差別化するには、人やコミュニケーションの質が大切になり、その一つには「提供している人々が楽しそう」も含まれているのかもしれません。さらに言えば、「我慢してツラそうに提供されていない」というUXが、大切になってきているのではなかろうかと。
優良顧客がいなくなる瞬間
僕自身の体験としても、とても好きで週1回は必ず行くラーメン店(チェーン)がありました。でもある日、1回だけ、たった1回だけ、店長が店員さんを罵声を浴びせる場面に遭遇しました。この瞬間、これまでのUXを全て帳消しにするほどの不快感が僕を襲いました。
「あぁ、食事という癒しを求めているのに、ここに来るとこんな場面に出会ってしまうかもしれない……」
あれから3年。二度とお店には行っていません。
僕が人一倍、人が人を怒る場面が苦手なのは認めます。それでも、月に5000円払うユーザーを離脱させるのに十分な事象だった、ということもまた事実です。
無駄が生み出す高揚感
話はおじさんに戻ります。CAMPFIRE上での「三茶ジャパン」の告知ページ、それはそれは楽しそうでした。何か解決したい課題があるわけでも、地球環境を守るといったビジョンがあるわけでもない。ただ、おじさんに関わって、真面目にふざけるだけ。
でもそこには他者への非難も無ければ、悲観的な言葉も無い。
おじさん三人組は、シェアハウスを運営していたり、フリーランスでエンジニアをしていたり、正直やることには困っていないそう。
そんなおじさん達のクラウドファンディングのチャレンジは、「無駄が生み出す高揚感を味わえるのではないか?」と僕に思わせたのでした。秘密基地を作ったり、どのポケモンを捕まえるか喧嘩しながらゲームに夢中になった、あの時の高揚感。
そこには一位という概念もなければ、優勝という賞賛もありません。その高揚感に対して3万円という対価、もとい、おじさんに関われる権利を買ったような気がします。
でなければ、安安というお店のクオリティ(失礼)と、おじさん三人組に囲まれるなんていうUXに、この笑顔は生まれません。
あなたの笑顔をみんなも見たい
楽しさを追求するUXは、伝え方を一歩間違うと、イタさを負ってしまいます。
「全員が笑顔なのは、カルト宗教かドラック中毒者だけだ。」とは、昔仕事をしたコンサルタントの言葉。僕もほぼ同意です。楽しさは、人間の喜怒哀楽の4分の1でしかありません。
「全員我慢するな!笑顔で働け!楽しめ!」は、ディストピアな職場の模範。自己嫌悪と自己肯定を行ったり来たりする振子運動の中に、その人の魅力があると思っています(全ての宗教とドラックからの更生を目指す人たちを中傷する意図ではありません。念の為)。
それでも、
「これをあなたに届けるとき、私は笑顔になってしまうんです。」
を言えるかどうか。それは、もう一度考えてもいいのかなと思うのです。だってこの写真のおじさんは、どれでも笑顔だから。
後日談
見事おじさんにハマって「三茶ジャパントレーナー」を買ってしまい、笑顔とは程遠い顔でこの記事を書いています。
(嘘ですよ。着るとめちゃきもちいい生地です。記事だけに。)
まとめ
相手に応援して欲しいときは、相手のメリットよりもまず「自分がそれを提供することに喜びを感じるか?」が出発点。ツラさや我慢は伝えるタイミング・順番を間違えなければ応援者が増える。かも。
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(特にあなたが購入しても僕とUXジャーナルには一銭も入ってこないので最後まで書くか迷ったのは内緒。)