最強の口コミを生み出すUX(金沢、忍者寺編)
2020.11.16

最強の口コミを生み出すUX(金沢、忍者寺編)

UXが超高い……寺?

旅行でもするか。仕事の一段落が着いたので、リフレッシュがてら遠出しようと思いつきました。そうして候補に上がったのが、金沢。

日本の旅館といえばの、加賀屋
プール裏からみるインスタが有名な、現代美術館
海産物がこれからシーズンの、能登半島

うんうん、良いぞ。少しググるだけで、見知らぬ人たちの金沢での思い出がたくさん出てきます。でもどうせなら一風変わった体験をしたい。そこでUXジャーナルのメンバーに連絡しました。

すると、

「金沢に行くなら、忍者寺のUXをぜひ。」

との返信あり。

「UXが超高い寺だから。」

忍者寺? UXが超高い……寺?? 意味がわからないし、とにかく胡散臭い。太秦映画村的なところだろうか。なんというか、ものすごくワクワクしない。でもUXジャーナルのメンバーが推すんだから、なにかあるのだろう。

そして(正直、重たい足取りで)行ってみました。すると、あった。信じられないほどの超いいUXが。寺に。

戦国トリップをVRではなく生身で

現地ではまず、当時(戦国時代)の忍者寺の背景について、お寺の案内役から解説を受けます(要予約)。

・加賀百万石というだけあり、金沢城主は幕府から常に目を付けられていた
・脅威と捉えられないよう、城主は鼻毛を伸ばして上京し、バカ殿を演じていた
・寺に城の役割を持たせ、敵襲にためのカラクリや迷路構造を散りばめた
・忍者寺の内部は四階建てだが、当時は二階建て以上の建造物は城しか認められなかったため、外観はどう見ても二階建て

などなど。そこから参加者20名が3グループに分けられて、案内されながら実際に寺内の探検をします。それはもう、子供も大人も(むしろ大人が!)大興奮する仕掛けの数々。

・床に埋め込まれた、落とし穴にもなる賽銭箱!
・通常時は戸が上にあって外から開けられない、隠し通路のフタ!
・敵が登ってきたら槍で応戦できる、階段裏の障子張り!
・どの位置からも窓を覗くと見え、近くの川まで横道が続く井戸!

いかがでしょうか。はい、あなたの言いたいことはわかっています。

文字じゃ伝わんねぇよ!

そりゃそうでしょう。そんなこと、こっちだってわかってます。ではなぜ、頑なにこの記事には写真がないのか。

忍者寺(内部)は、すべて撮影NGなのです。

写真を載せたくても、載せられない。伝えたくても、伝えられない。だからこうして、僕は忍者寺で体験した感動や衝撃を、必死になってなんとかあなたに伝えようとしています。

情報がこれだけ溢れる時代、検索すればなんでも出てくる時代、最も人を惹きつけるものは「検索しても出てこない情報」、そしてウンザリするほどの広告宣伝ではなく「知人からの興奮した口コミ」なのは間違いありません。

まとめ

忍者寺が持つアクティビティとしてのUXの高さは一流です。でもそれ以上に、SNSで「バズる」「映える」の時代に、あえて写真撮影を禁止し、情報を隠す(秘密にする)ことで生の口コミを生み出すという(体験後)UXの妙。

もし、いくらでも撮影OKだったなら、僕はここに数枚の写真を載せて終わりだったどころか、そもそも忍者寺の紹介さえしなかったでしょう。また、事前に忍者寺に関する画像をネットで見て、現地ではその確認作業で感動も衝撃もなかったかもしれません。

現地に行った人しかわからない。詳細を伝えたくても、伝えられない。気になっても(現地に行くしか)解決する手段がない。あなたの商品やサービスには、口コミを起こすための仕掛けがあるでしょうか?

それを考えるには、ユーザーの「利用後のUX」を想像することです。あえて情報を隠す。秘密をつくる。バズりも映えも捨てる。そこから生まれる最強の口コミUXの威力を、僕は忍者寺で体験しました。

あえて情報を制限し、ユーザーの「伝えたくても伝えられない!」状況をつくることが、口コミを生み出す素晴らしいUXになる。

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