
2週間のための11ヶ月
4月上旬。石垣島や宮古島を旅するのが、ここ数年の僕(米川)の恒例行事になっています。
きっかけは、初の石垣島でのサンセットカヤック。それからは、この時期のために残り11ヶ月を(東京で馬車馬のように)働いています。
ワーク&バケーション
今年はリモートワークも浸透してきたので、思い切って2週間のワーケーションにチャレンジしました。この文章の執筆時現在は、滞在期間のちょうど半分を過ぎたあたり。
残り1週間で僕の UX がどうなっているかわかりませんが、少なくとも現在は誘惑に打ち勝ちながら仕事ができています。そしてここに来たからこそあった学びを一つ、シェアします。
完全仕事適応の自室との差は
出発前、ワーケーションにあたり、一つの問題が浮かび上がってきました。その問いとは。
「昨年1年間かけて、リモートワーク用にカスタムした自室の生産性に、ワーケーションが果たして勝てるのか……?」
テーブルの高さ、モニターの位置、椅子の座面の高さ、温湿度計……etc.
上記の組み合わせと「アウトプット量 / 日」を試行錯誤し、自宅の作業デスクには実に中古車1台分ほどのコストをかけました。そこでの生産性が、果たしてワーケーション先の部屋が上回るのか。
「ワーケーション」の半分は「バケーション」ですから、多かれ少なかれ生産性の低下は否めないだろうし、仕事時間を伸ばす覚悟はしていました。事実、影響がありました。けれど、予想外に生産性が向上した面もあったのです。
クリエイティブ生産性が3倍違う
結論から言えば、生産性が下がったのは経費精算やフォーム作成などの「作業系タスク」、逆に生産性が上がったのは、企画のアイデア出しや構造化などの「創造系タスク」及びトレーニングです。
これはもう、明らかに違います。都内の自宅では、今読んでいただいているこうした記事の作成に速くても 60分、平均的には 90分 ほどかかります。しかし、今回の記事に至ってはここまで 25分 程度で書けています。質は変わらないものとして、3倍もの生産性の差は……なぜ?
思考を変える「アクショントリガー」
「アクショントリガー」という概念があります。ニューヨーク大学の心理学者、ペーター・ゴルヴィツァーの研究では、レポートの作成場所と時間を決めて生徒にアナウンスした場合、決めなかった場合よりも 42% 提出率が向上したという実験結果があります
要約すれば「いつ・どこで」という「行動のトリガー」を決めることが極めて重要で、このトリガーを「アクショントリガー」と言います。
石垣島滞在中は毎朝、1日のタスクを決めた後、海に行きます。ゆったり海を眺めたり、天気の良い日は少し泳いでから午後、仕事に取りかかります。このサイクルと場所による行動の違いが(自然な)アクショントリガーとなり、生産性の向上という結果につながったのでは、と仮説を立てています。
時間、住む場所、付き合う人
もちろん、仕事での生産性は、場所だけで決まるものではありません。チームメンバーやステークホルダーとの関係性、同時に抱えているプロジェクトの規模・納期など、様々な因子が混在するので、安直に先の仮説が正しいとは言い切れないことはわかっています。
ただ、外資系コンサルティングファーム、マッキンゼーの元日本支社長である大前研一さんも、人が行動を変えるにあたり、環境の重要性に言及しています。
1番目は時間配分を変える。
2番目は住む場所を変える。
3番目は付き合う人を変える。
この3つの要素でしか人間は変わらない。
最も無意味なのは「決意を新たにする」ことだ。
まずは半日から環境イノベーションを
ワーケーションに対し、社会の同意や理解が追いつくには、まだもう少し時間がかかりそうです。ただ、もしあなたがあるテーマで悩んでいるなら、「それが解決している時の自分は、どんな環境にいるだろうか?」を想像し、実際に思いを巡らせた環境で半日を過ごしてみることをおすすめします。
悩んでいたテーマ自体が、その場所に行ったら解決してしまった、なんてことも、ないとは言い切れませんからね。そしてもし、そうなったなら、最高じゃないですか。
思考を変えたいと思うなら、「思考が変わった自分」が過ごしているはずの環境に身を置いてみよう。