社長が平日にゴルフ行ってるけどナニか?で分かる働きごこちの社内UX
2020.12.02

社長が平日にゴルフ行ってるけどナニか?で分かる働きごこちの社内UX

 想像してほしい。もし、あなたの会社の社長が、平日にゴルフに行き、楽しそうな写真をSNSにアップしたら……社員の皆さんはどう思うだろうか?

コロナ禍で進んだリモートワークの本当の価値

「こっちは休む暇もないのにゴルフなんて行きやがって!何考えてんだ!仕事しろ!」

これがあなたの心の声だとすると、あなた自身も、あなたの会社も、働き方改革やDXに程遠い状態にあると言って間違いない。そもそも「リモートワーク」のメリットを、どのように捉えているだろうか?

私はDXによるリモートワークや働き方改革を、以下の4段階で考えている。

 (1)メンバーの生産性の向上
 (2)メンバーの幸福度の向上
 (3)顧客便益の向上
 (4)売上と利益の向上

 例えば(1)の「メンバーの生産性の向上」では、通勤時間がなくなることで睡眠不足が解消され、労働の生産性が上がった。会議や書類が電子化されたことで、短時間で処理が済み残業が減った。という事例が挙げられる。

(2)の「メンバーの幸福度の向上」は、生産性の向上によって生まれた余暇時間を使い、趣味や家族、恋人との時間が増加したり、ワーケーションのように場所を選ばずに働けることでストレスが減ったり、副業や地域コミュニティとの新たな体験を通じたキャリアの選択肢が増えるといった幸福も挙げられる。平日にゴルフに行けるのもその一つだろう。

(3)の「顧客便益の向上」は、(1)と(2)のメンバーの生産性の向上、幸福度の向上によって、働く側の意識や体験がアップデートされることが鍵となる。(1)と(2)が満たされる過程で、新しいイノベーションやサービスが生み出されたり、自動化やデータ化によって顧客への反応や感度が上がったり、労務コストが削減されたことによる価格の見直しなどの可能性も生まれてくる。

(4)の「売上と利益の向上」は、(1)によっての費用の削減、(2)と(3)によって売上や利益が増加することが挙げられる。

在宅勤務なのに「外出しているなんてけしからん!」という感覚があなたにもないか?

 こう考えたなら、仮にあなたの会社がリモートワークを導入していようと、自宅の部屋からしか仕事ができないという環境ならば、それは「オフィスが自宅の部屋に変わっただけ」に過ぎない。

つまり段階的には(1)止まりだ。そもそも「自宅の部屋で仕事をしたいか?」という問題だってある。人によっては家族との共有スペースで仕事をすることを強いられ、肩身が狭い思いをしているのではないか。環境音が邪魔で、仕事が手に付かないという人もいるだろう。

「就業時間の9時―5時は家から出るな!」と言った瞬間、リモートワークの価値を(1)で止めていることに気づかなければいけない。

 リモートワークは在宅ワークに限定されたものではなく、場所を選ばずに働けるという意味を持って、はじめて(2)以降の段階に発展できる。

ワーケーションなども良い例だが、働く人が働きやすい場所や時間を選び、時空を超えることで、生産性や幸福度を上げることこそが、真の価値であることを忘れてはいけない。

なぜゴルフが標的にされるのか?

 話を冒頭に戻そう。では改めて、なぜ「社長が平日にゴルフに行くとムカつく」のか?
ありがちな他の事例と比較しながら考えてみたい。

■ 例えば、ゴルフではなくサーフィンだったら許せるだろうか?
イケてるIT企業やアウトドア企業では、経営者や幹部が朝からキャンプやサーフィンを楽しみ、午後からオフィスに向かうことを「エクストリーム出社」などとカッコいい名前をつけて肯定している。

「いやー、今朝は波が良かったからさー」と言おうものなら、その自由な感覚と、日に焼けた健康的な風貌もあいまって、遊びも仕事もバリバリこなすイケてる社長というイメージに惑わされてしまいそうだが、やってることはゴルフと変わらない。

■ 少し角度を変えて、農業だったらどうだろう?
「今朝は畑で収穫をしてから会社にきました」と言えば、なんとロハスな社長なんだろう、そこには自然と共存するサスティナブルな雰囲気を感じざるを得ない。朝陽が降り注ぐ畑で採れたてのトマトをザルに盛り、笑顔で汗を拭う……人にも自然にも優しい社長というイメージに惑わされてしまいそうだが、これもゴルフと何が違うのか?

■ 最後に、ゴルフはどうか。
一緒にプレーしている仲間は休日着のような小太りのオジサンたちで、「なにか悪巧みをしているのではないか」という妄想が膨らんでくるかもしれない。どんな想像をするも勝手だが、ゴルフも自然のなかで朝陽を浴びて行うスポーツであり、サーフィンとも農業とも変わらない。むしろ会話をしながらプレーできるという点を考えると、それが取引先や社員とのゴルフであれば、サーフィンや農業よりもはるかに生産的な活動と言えないだろうか。今は密を避けるために敬遠されている、会議室での会議や、飲み会の延長と考えられなくもない。

我慢や犠牲を“働くこと”の必要要件と考えるのはもうやめよう

 そもそもリモートワークの前提となっているテクノロジー(情報技術)は、価値中立(労働者のためでも、資本家のためでもない)だ。「便利さ」や「快適さ」を通じて、人間に豊かさをもたらすために使われている。

もしあなたが、テクノロジーを通じた働き方をしているにも関わらず、豊かになれていないなら、使い方を疑ってみる必要がある。そしてリモートワークで、他の人が趣味を楽しんだり、家庭と仕事を両立していてたり、豊かな人生を送っていることに対して「オカシイ!」と思うのであれば、自分の固定概念こそ疑うべきだ。

“犠牲”や“我慢”を仕事の成果とみなしていないだろうか?

 多くのサービスは、人間の不便や不満を解消するために生まれてくる。もしサービスを作ったり、人事制度を作る側のあなたが、自分や社員の不便や我慢を「必要」と考えているならば、その時点で働き方改革もDXも進まないことを自覚しなくてはいけない。

監視の目が届かないのを良いことに、仕事をサボったり、成果を疎かにすることは論外だ。経営者の感覚で言えば、監視がなければ働けない人を雇うために、監督者を雇っていること自体もコストであり、これこそ社員にも社長にも最大の不便で不幸な状況と言える。

社長が平日にゴルフ行ってるけどナニか?

 平日に社長が楽しそうにゴルフやサーフィンをしている写真がSNSに上がっていたら、すかさず「社長楽しそうですね!」とコメントを入れよう。決して妬んだりしてはいけないし、無視してもいけない。羨ましいと思ったら「私も今度ご一緒させてください!」とコメントを入れてみても良いかもしれない。

事務作業はゴルフ場のクラブハウスでもビーチハウスでもできるし、ミーティングだって会議室じゃないアウトドアの方が、良いアイディアがでることを忘れてはいけない。

それが社長もあなたも含めた、メンバー全員の働く幸福度を上げることにつなげたいのであれば、その投稿を「うちの社長、平日にゴルフ言ってるけどナニか?」とシェアしよう。あなたが怒られなければ、日本中にリモートワークの素晴らしさを普及できる。

ゴルフ活動家としては、これを機に平日にゴルフをする社長が増えることを願わずにはいられない。

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