増えた?減った?オンラインMTGのUXはどうすれば上がるか問題
2022.01.26

増えた?減った?オンラインMTGのUXはどうすれば上がるか問題

 リモートワークの普及で MTG は増えましたか?
ますますメールからチャットでのコミュニケーションが社内外で一般的になってきた感があります。リテラシーの高い企業や組織は、「同期」と「非同期」のコミュニケーションを上手く使い分けるようにもなってきました。

「UXジャーナル」の運営母体である株式会社文殊の知恵(以下「文殊」)でも、調整や確認、一方的な報告などは Facebook Messenger や Slack など非同期のチャットツールで、議論の必要があるものは Zoom などの同期コミュニケーションで、と住み分けがなされています。

「文殊」が支援している企業でも、

「内容が同じで出席者の違う会議(報告会)が毎月三回もあり、自分は立場上そのすべてに出なければいけないけど、本当に時間の無駄」

「出席者が多すぎるし、しかも発言者は決まっているので、ほとんどの人はただ仕事の手を止めて聞いているだけの会議がけっこうある」

といった不満の声(課題)を耳にします。まずは「同期」「非同期」という視点から、「本当に同じ時間と空間(オンライン上であれ)を共有しなければならないのか?」を整理し、非同期で構わないもの(人)はどんどん非同期にしていくだけでも、効率も生産も劇的に向上し、不要なストレスが大幅に軽減されるはずです。AI だの RPA だの DX だの言う前に、まずはこれをやりましょう。

赤字の垂れ流しを今すぐなくす三つの方策

 大げさに言えば、わざわざコミュニケーションを「同期」で行う、つまりオフラインであれオンラインであれ MTG を行うということは、それだけの意義や価値を見出さなければ企業にとって「もったいない」どころか「赤字(損失)」だということです。なにせ、もっとも貴重な「時間」という資源を、しかも何人分も費やすわけですから。

そう考えると、基本アプローチは三つあります。一つには単純に「時間を短くする」ことです。これまで二時間だった定例会議が一時間になるだけでも、コストは半分に削減されます。「文殊」でも、MTG の基本設定は一時間になっているので、それを四十五分にしたいと(個人的に)企んでいます。二十五パーセントの時間節約ですが、年間ではかなりのインパクトになるはずです。

次に「(同期)参加者を減らす」こと。本当にその人がそのときいなければいけないのか。そうでなければ「非同期」的に内容を理解するだけで十分です。

三つ目のアプローチは「MTG そのものの価値を向上させる」こと。今回はここに焦点をあてて話を進めていきたいと思います。

補足ですが、必要な無駄もあります。代表は「グルーミング(毛づくろい)」を目的としたコミュニケーションです。「最近どう?」といったグループ内の状況を把握したり、親睦を深める時間、貴重な情報源になる雑談の時間などは、「同期」で行う意味も価値もある行為です。非効率なものすべてが「無駄」ではない、ということは忘れてはいけません。

MTGは“本番”だという意識がどれだけあるか

 MTG の基本構造は、「二人以上」で「同時」にある「テーマ」について「議論」することです。いやいや、MTG とは「決める場だ」やら「結論を出すことだ」やら「次のアクションを明確にすることだ」と言いたがる人がありますが、それらは MTG の目的であり、求められる機能の話です。ぼくが今言いたいのは、あくまでも「MTG」というものの「かたち」です。

MTG が「二人以上」で「同時」にある「テーマ」について「議論」することだとするならば、そうする理由は「一人では実現不可能な深い議論によって、より質の高い思考(結論)に到達するため」であるはずです。

実際、MTG によって組織にとってのさまざまな重要事項が決定されたり、方向づけられたりします。ゆえに MTG とは「本番」です。この意識がまだまだ薄い気がします。

そしてよく言われることですが、「練習」でできないことは「本番」でできません。「練習」で出せない力は、「本番」でだって出せないのです。スポーツとまるっきり一緒です。「思考(考える)」とは、情報空間上の運動なのですから。

下手なバンドマンはLIVEばかりする

 友人のバンドマンがよく「技術が上達しないバンドマンには共通点があって、ライブが好きってこと。練習しないでライブばっかりするんだよ」と言っていました。

ぼくは先ほど「MTG は『本番』だ」と書きました。これはバンドマンのライブと同じです。MTG という「本番」ばかりやっていると、「その場をうまく乗り切る技術」はつくかもしれませんが、MTG で本質的に求められる力はいつまでも向上しません。力は日頃の「練習」によって培われるものだからです。

さらには、MTG は会話の動きが早く、時間も限られています。そのなかで価値を発揮できるかどうかは、「本番以外の時間」でなにを思考しているかに大きく依存します。当然の話として、ゆっくりと時間をかけても深く質の高い結論を出せない人が、「本番」の短時間でそれができるわけがありません。

「練習」とは、大雑把に言えば「スピードを速め」「質を高める」ために行うものです。逆の見方をすれば、速度(スピード)に制限のない状態で、高い質のアウトプットを出せないのであれば、まずはそれをできるようにならないと、どうしようもないのです。

脳の回転数を上げる

 他にうまい表現が見つからないのですが、ぼくは「脳の回転数を上げる」ことが重要だと思っています。抽象的な話になりますが、ふだんから脳の回転数(RSB = Rotational Speed of Brain)が「30(RSB)」で生活している人は、MTG でも当然のことながら(最高で)「30(RSB)」までしか出せません。

ふだんの生活は「30 RSB」で事足りても、意識的に、時間がかかっても、瞬間的でいいので「40 RSB」「50 RSB」「60 RSB」と出せるように訓練していく。そのためには、筋トレのように脳に負荷をかけていく必要があります。

そうやって「80 RSB」まで上げられるようになったなら、MTG でも瞬間的にがつんと RSB を上げて思考ができます。その結果、「一人では実現不可能な深い議論によって、より質の高い思考(結論)に到達する」が叶う可能性が高まります。

リモートワークによって出退勤時間が節約され、以前より時間が増えたビジネスパーソンも多いのではないかと思います。生まれた時間は追加の仕事をするのもいいですが、ぜひ「本番」のための「練習」に使ってみるのはどうでしょうか。元々自由時間の多いフリーランサーはなおさら、「練習」量が実力に直結していくので重要です。

具体的な「脳への負荷のかけ方(脳の回転数の上げ方)」の解説をすると、さらに数倍のボリュームになりそうですので、興味のある方は個人的に訊いてください(気が向いたらお答えします)。その方法を自分なりに考えることも、脳への負荷となり、回転数を上げる活動になりますから、ぜひとも自分で考えてみてください。なにより、自分で編み出したトレーニング方法こそ、なんでも検索すればわかる時代の、貴重な秘密(アドバンテージ)になるわけですから。

では、また書きます。

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