テレワークで増えた違和感
すっかりキャズムを超えた「テレワーク」という言葉。僕の働く「文殊の知恵」というチームは、創業時からテレワークを前提としていました。しかし最近になり、世の中に浸透してきたからこそ違和感を覚えるシーンが増えています。
「あれ、ちょっと自分が想定していた会議と違うな……」
「この依頼文は、結局どんなアウトプット出せばいいんだ……?」
相手が目の前にいないからこそ、いちいち確認コストも発生するので、できることなら避けたいなあと、ここ三ヶ月ほど考えていました。
要因は、曖昧さをはらむ文章や言葉
文章や言葉は、すべからく曖昧さを持ち合わせています。「お腹空いた」は人間の生理現象を表す言葉として、朝ごはんを食べ損ねた日本のビジネスパーソンから、地球の裏側に住むブラジルの子供たちまで、口にすれば相手に誤解なく伝わります。
でも、ビジネスシーンでやりとりされる言葉は、それほどシンプルではありません。ゆえに曖昧さを回避するため、僕らは属性や背景の補足、言葉の定義を行いますが、正直面倒だと感じることもしばしば。そんなことをしなくても、相手に自分のニュアンスが伝われば、とてもUXがいい。
もしあなたも「そうなんだよなあ」と同意されたなら、メンバーとの対話から生まれた、一つの解決法をご提案します。
絞れ!『ではなく』構文
必殺技のようなタイトルですが、誰も殺しません。ご安心ください。結論から言えば、あなたの伝えたいこと(=主張)と対になる概念を、主張の前につけるだけです。もしくは、相手の言葉のニュアンスに迷う場合は、同じく近い概念の言葉を持ち出し、質問します。
・情報共有の会議『ではなく』アイデア出しのディスカッションの場です
・外資系キャリアウーマン『ではなく』中小企業の事務系女性が対象ということですね?
いかがでしょうか、とても簡単ですが、効果は抜群です。
対比で本質が見えてくる
企業が新規事業をつくるとき、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)を策定します。ざっくり言えば「市場をある領域で分け、その中で選んでくれそうな人を絞り、その中で選ばれるようにする」というもの。
逆に言えば、「選ばれない人を決める」作業でもあります。
対比をすることで、そのものの本質が見えてくるのです。
聞き手の脳のリソース不足解消=判断されやすくなる
『ではなく構文』にはもう一つメリットもあります。それは「聞き手に判断されやすくなる」ということです。『ではなく構文』は、聞き手の脳のリソースから曖昧さを削除できます。ここでいう曖昧さとは「かもしれないという可能性」です。
パソコンがタブを開きすぎると動きが鈍るように、脳も「かもしれないという可能性」が増えすぎると、動きが鈍ります。先日読んだ本の中で、スタンフォードの研究でも「脳はマルチタスクがほぼできない」という結果がありました。
発信側の自分も誤解がなくなり、聞き手も判断しやすい。UXが高い『ではなく構文』を、あなたも使ってみませんか?
まずは身近な人向けてトレーニング
とはいえ、いきなり取引先との商談や役員会議で使うのは躊躇われる気持ちもあるかもしれません。そんなあなたに朗報です。この構文のいいところは「相手に情報を伝える」場面のほぼ全てに利用できるという点です。
ということで、この利点を活かし身近な人に向けて伝えるトレーニングから始めてはいかがでしょうか?
・明日は直近のことの話し合い『ではなく』三年後に向けた対話をしない?
・お願い事を聞いてもらったら、すみません『ではなく』ありがとうを伝えてみたら?
・明日から『ではなく』この文章を読み終えた30分以内に、使ってみない?
あなたの人生に、誤解解消や背景補足の時間『ではなく』暖かさや想いが伝わる時間が増えれば、書いている僕もとても嬉しいです。
誤解解消や背景説明に時間がかかっている場合は、主張の対比をセットで伝えてみよう