
世界文化遺産は工事中
東京上野、そこは美術館も博物館も多数集まるホットスポット。なんと国立西洋美術館は2016年に世界文化遺産にも登録されています。通える場所に世界遺産があるって素敵ですね。もっぱら前を素通りするだけですけれども。
先日、同じく上野にある科学技術博物館に行く手前で西洋美術館の前を通りました。が、目にしたのは「工事中」というフェンスに囲まれた美術館。残念です。
電気設備の改修工事のようでした。貴重な建築物ですし、長く価値を残すためにも定期的な工事が必要なのでしょう。
大規模な工事現場になると、フェンスも大きくなります。まるで大きな掲示板のように、あれこれ情報を載せてくれます。小学校のアルバムよろしく、モノクロ航空写真と今の比較などがあると、個人的にはたいへん興味を惹かれます。しかもこれだけ大きく見せられるとインパクトもでかい。うん、好きです。
寓話から学ぶ仕事への向き合い方
「3人のレンガ職人」という寓話をご存知でしょうか。「仕事との向き合い方」といったテーマで、聞いたことがあるかもしれません。思い切って要約すると、こんな話です。
1人目は「レンガ積んでんだよ、命令だからな」と答えた。
2人目は「レンガを積む仕事をしてんだよ。家族を養うためにな」と答えた
3人目は「立派な教会をつくってんだよ。将来、たくさんの人がここに祈りにこれるようにな」と答えた。
教訓としては、同じ仕事でも目的意識をどこにもつかは本人次第だよね、ということでしょうか。
で、国立西洋美術館の工事現場のフェンスには、こう書いてあったのです。
「世界遺産の価値を高める工事を行っています」
なるほど、そうきましたか。ただレンガ積んでるだけじゃないんですね。レンガを積むこと(=建築、電気設備の改修)を通じて、世界遺産の価値を高めていらっしゃると。レンガ職人でいうと、仕事の目的を答える3人目の姿勢が感じられます。
では、このフェンスをみて私は何を思ったか。
・目に見えるかたちでのメッセージは、ただ思ってるだけよりもパワーがある
・私はこの工事現場で働く人たちに対して、感謝したり応援したりする気持ちが湧く
街の工事現場では、こんなメッセージを見たことはありませんか。
もちろん工事の種類にもよるのでしょうが、ふと目に入った時に「そんな謝らなくてもいいのになあ」と思ったことがあります。
一方で西洋美術館のフェンスに書かれたメッセージは、なんだか応援したくなる気持ちになりました。「工事が終わったら観に行くよ!」とさえ思います。いつも素通りしてた私なのに、フェンスのテキストのおかげで、ちょっと嬉しくなった上野での出来事でした。
おまけ
ところで、本文中で「3人のレンガ職人」の寓話を紹介する時、適当に「イソップ童話の〜」とかって書きそうになったんです。でもほんとかどうかは知らないし、出典というか原典も知りたいなあと思いまして、一応調べてみたんですね。
そしたらなんと、イソップ童話じゃありませんでした。海外のお話ですらなく、どうやらとある学校の先生の創作だったそうです。詳しくはこちらのサイトをご覧ください。図書館って、すごい。尊敬します。