これからのオンラインサロンのUXを考えてみる
2021.12.15

これからのオンラインサロンのUXを考えてみる

 オンラインサロン・ブームが終わりました。
もうブームではなく、一つのプラットフォームとして確立され、「時代の寵児」ではなくなりましたね。

今年の秋口から主要オンラインサロン(西野亮廣、石井裕之、堀江貴文、中田敦彦 ※敬称略)の退会者数が、新規参加者数を上回るようになり、右肩上がりだった成長は、全体的に右肩下がりになりました。このダウントレンドがどこで均衡を保つのか、重要なウォッチポイントです。

とはいえ、オンラインサロン自体は事業者(主催者)にとって安定した(トップクラスでは驚くほどの!)固定収入になる、優れたビジネスモデルであることには変わりありません。また、基本的に限界費用が働かないため、参加者は多ければ多いほど利益はうなぎのぼりです。ローリスク・ハイリターンが夢見られるので、今後も新規参入は増えていくでしょう。

ただ、運営方法や運営方針は、少し様変わりしていくのではないかと見ています。具体的には、「参加人数の上限」が一つの「うり」になってくると予想しています。

オンラインサロンのUXが下がった?

 トップクラスの参加人数や売上を誇るオンラインサロンを、仮に「マンモスサロン」と呼ぶことにします。オンラインサロンを主催する以上、誰もがマンモスサロンに憧れ、マンモスサロンを目指します。

しかし、マンモスサロンの成長は頭打ちし、どんどん人が離れていっていることは先に述べました。

理由を推察するに、オンラインサロンそのものが「トレンド」だったため、トレンドセッターや准トレンドセッターが「トレンドだから」という理由で参加し、そして「トレンドではなくなった」ため退会した、ということは考えられます。

それ自体は一つの現象ですから、避けることはできず、ゆえに気にする必要もありません。

問うべきは、サロンがマンモス化したことによるUXの低下。つまりユーザーが「オンラインサロン」に期待していたことが、マンモスサロンでは満たされなくなったのではないか、という仮説です。

名は体を表す(ことが期待される)

 オンラインサロンに入会する人のモチベーション(期待)はなにか。さまざまあるはずですが、要約すれば、以下の二つが共通項のようでした(オンラインサロン比較サイトのレビューを参考にしました)。

 1)なにか(秘密)を学ぶことができる
 2)サロンメンバーになれる

1は当然満たされなければいけませんが、それについての不満はほとんど見られませんでした。オンラインサロンの参加費が一部を除き千円程度と全体的に低額のため、情報量や情報の質への不満は感じにくいのかもしれません。

問題は2です。「いやいや、お金を払って入会したのだから、その瞬間からサロンメンバーでしょ」と思われたなら、あなたはきっとオンラインサロンに参加したことがないのでしょう。

オンラインサロンは、「サロン」であり、ただ入会することと、自他共に認める「サロンメンバー」になることとの間には、一朝一夕では超えられない壁が存在します。マンモスサロンになればなおのことです。

そのため、マンモスサロンで「サロンメンバー」として活動できている人は、きっと費用の何倍も得るものがあり、最高の投資になっている一方、サロンメンバーではない傍観者、サロン会員でありながら、サロンメンバーの一員ではない人にとっては、「同じサービスが受けられない」と不満が出てくるのも自然なこととして理解できます(本人の努力次第だとしても)。

成長の上限を決める時代

 SDGsも、サスティナブルも、エシカルも、ぼくはよくわからないのですが、ただ企業が(個人も)自身で適正な「成長の上限」を決め、それを守ることができれば、かなりの部分が解決されるのではないかと思っています。

成長の上限を決めるということは、伸びる可能性のある売上を自分で止めるということです。なかなかできることではありません。でも、もうそういう時代な気がします。同時にそれが、個人や小さな組織が、強大な企業と渡り合うための道(武器)だとも思っています。

オンラインサロンが、仮にメンバー数に上限を設定したらどうなるか(例えばダンバー数の150人まで)。すると2つのことが起こります。

 1)参加者全員にまでおよそ目が行き届く
 2)売上がしょぼくなる

1により、最後に参加しようが、すでにコミュニティ(サロン)ができあがっていようが、自分が好意的であれば「サロンメンバー」になるハードルがはるかに下がります。主催者がどれほど著名人であっても身近になります。

一方で、2のとおり売上はかなりしょぼくなります。月千円のオンラインサロンならわずか15万円、倍の二千円にしても30万円です。はっきり言って、これでは企業はビジネスになりません。だから絶対にやりません。だから、「それでもいい」チームや個人は「強み(差別化)」になります。

あるいは、サロンにしなければいい

 先の提案は、あくまでも「オンラインサロン」の場合です。オンラインサロンとは名ばかりで、実質は有料メルマガだというのであれば、別にダンバー数を気にすることもありません。交流がなく、期待されていないのなら、それは「サロン」ではないのですから。わざわざ売上を下げる道理もありません(それでも500人くらいまでが面白いんじゃないかと思ってますけれど)。

ただ、一つの方向性として、「成長を制限するという武器」が、今後使い道を持ってくる予感があります。そのときのキーワードはやはり「UX」です。

どれだけ人数が増えようが変わらない「UX」を届けるために、大企業(大きな存在)は「DX」に躍起なわけですが、ぼくら(小さな存在)はふつうにテクノロジーを利用するだけで十分です。足りない分は、大きな存在が絶対にできないことで賄えばいいのです。それが、小さな数という制限です。

今後「参加人数上限ありサロン」が台頭するのか、そんなことはないのか、楽しみにウォッチしていきましょう。個人的には、文殊の知恵(UXジャーナル運営組織)で、限定成長型事業をやってみたいと思っています。ではまた。

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