
集中して仕事をするときの、ぼくなりの儀式があります。
(1)iPhone を機内モードにする
(2)部屋の照明を消してデスクライトだけにする
(3)イヤホンをして Bill Evans のジャズを流す
重要な仕事の大半は文章を書くことか、企画を立てることなのですが、限られた時間内で「ゾーン」に入る方法として役立っています。
相棒、壊れる
驚かれるのですが、仕事中はぼくは基本的にずっとイヤホンをしていて、イヤホンをしているときは十中八九 Bill Evans を聴いています。そして Bill Evans の同じアルバム(プレイリスト)を、15年聴き続けています。未だに曲目は知りませんけれど。
イヤホンは数年前から BOSE のノイズキャンセリングを使っています。片耳ずつ分かれているものではなく、バッテリーの持ちがいいので、首にかけるタイプのものがお気に入りです(Quiet Control 30)。
MacBook Air と共に、どこにでも連れていく、ぼくの大切な仕事道具であり、相棒です。そんな相棒が、壊れました。
そうだ、ヨドバシ行こう
そんなわけで、ヨドバシカメラに修理に持っていきました。時間の都合が合ったので、大学時代からの古い友人と一緒に向かったのですが、ふらふら店内を歩いているときに、友人が「コーヒーマシンを見たい」と言いました。
ぼくは基本的にコーヒーを飲みません(カフェインを摂らない)。なので、コーヒーマシンの進化には疎いのですが、「デロンギがいいらしい」という噂くらいは、耳にしたことがあります。
思ったとおり、家庭用の全自動コーヒーマシンのコーナーには、大きなデロンギのブースがありました。男心をくすぐるような、立派にきらめくマシンが並んでいます。
どこをチェックして、なにを比較すればいいのかさえわからないぼくは、とりあえず(よくある三つ折りになった)パンフレットを一部頂戴しました。そして、「おお!」と思わず感心しました。
それが一番大事
なんでも家で、ネットで、買える時代です。買えるだけでなく、その手前の比較検討、リサーチ、価格比較までできます。むしろ家電量販店に足を運ぶよりもネットの方が情報量は多いでしょう。
では、どんなとき、どんな人がわざわざ家電量販店に行くのか。ネットが使えない人は置いておいて、大半は現物を見たい人か、思わぬ出会いを求めて(楽しんで)いる人、もしくはぼくのように別の用事のついでの人かもしれません。
友人のように、購入意欲が高まっていて、現物を見たい人にとっては、どれだけネットで写真や動画やレビューを見ようが、百聞は一見にしかず、実際に目にするリアリティこそ最大の価値です。
だからといって、それで即断することは稀です。結局は一度家に帰り、頭を冷やして、そしてネットでレビューを読み、価格比較して、買う、というのがメジャーな流れのように思います。
では、こんなユーザーのジャーニーに対して、パンフレットができることはなんでしょうか?
パンフレットを持ち帰る意味を
自宅での検討を押し進める。それがアナログな(デジタルではない)パンフレットに求められていることのはずです。
全自動コーヒーマシンは家電であり、家電はその名のとおり家に置くものです。そうすると、気になるのは「どこに置くか?」「ここに置けるか?」です。
デロンギには、全自動コーヒーマシンのラインナップが5種類、3サイズありました。そして、デロンギのパンフレットを開くと、なんと片端がメモリのついたモノサシになっており、各ラインナップの大きさ(高さ・幅・奥行き)に印(しるし)がついているではありませんか。
このパンフレットさえあれば、わざわざネットでサイズを調べ、メジャーを出して測る、という手間が一切かかりません。なにより、コーヒーマシンを買ってもらうために「パンフレットを持ち帰る理由」を生み出しています。
いいUXは広告ではなくなる
メーカーのパンフレットは広告です。でも、デロンギのコーヒーマシンを検討している人にとっては、デロンギのパンフレットは広告以上のものになっているはずです。
比較検討の対象としてパンフレットを持ち帰るのではなく、どのラインナップなら置けるのかを確認するための便利な道具として持ち帰る。気づかないうちに、そういう脳内変換が起こっていてもおかしくありません。
ここからぼくが学んだことは、いいUXを提供している広告は、もはや広告ではなくなる(のではないか)、ということです。ぼくも広告屋の一人として、そんな広告を手掛けたいと勉強になりました。
おまけ
イヤホンはというと、実は二回目の修理ということもあり、保証期間の対象外でしたが、なんとか(無償に)なりそう、かも……という状態で、じゃあ、なんとかなれ、と祈っている毎日です。ぜひ、なんとかなってほしい。
いいUXを提供している広告は、もはや広告ではなくなる