
問題です。科学やテクノロジーの進歩、そして普及に、不可欠なものはなんでしょうか?
(シンキング・タイム)
アイデア? 情熱? 不満や不便? もちろんそれらも大切ですが、絶対に外せない要素があります。
そう、「予算」です。
漫画家と科学者の憂い
漫画家の山田玲司さんが、あるときこんなことを言っていました。
「漫画家は、好きな漫画を描ける職業じゃない。いま売れる漫画を描かせてもらえる職業だ」
なるほど金言です。ぼくも出版に向けて動いているなかで、作家も「伝えたいことが書ける」わけじゃなく、「いま売れそうなものが書ける」職業なのだと痛感しました。
未来をつくっている科学者にしても、事情は同じ。科学者も、研究したいことが研究できるわけじゃなく、予算がつくものが研究できます(そこに、自分のやりたいことを、ねじ込むわけで)。
この認識は、とても重要です。
なくなる職業、なくならない職業
近い将来なくなる職業、という一覧や記事を、あなたも目にした事があるかもしれません。
そこには、医師(診断)や税理士、スポーツの審判、タクシードライバーといった、極めて専門性の高い職業から、身近な職業まで、ほとんど全部じゃないかと言いたくなるほど、たくさんの仕事が挙げられています。
共通するのは、創造性よりも、多くの事例をベースとした高度な判断が求められる、という点。これこそ、膨大な教師データの吸収と解析という、AIの得意分野ですから。
でもそのなかで、同様に膨大な知識と経験、判断を必要とするにもかかわらず、AIに代替されない(代替されづらい)職業があります。
考古学者です。
市場がないから安泰という矛盾
条件は同じなのに、なぜ税理士はロボットの仕事になり、考古学者は人間の仕事でありつづけるのか?
もうおわかりですよね。そうです、「予算」の問題です。
マーケット(市場)が大きいところほど、投資対効果(リターン)が期待できるので、国家も、企業も、予算をつけます。優秀な人材を投入し、イノベーションを起こそうと躍起になります。
一方で、マーケット(市場)が小さく場所では、仮にテクノロジーによって飛躍的な進歩が見込めても、投資対象とはなりません。
このことは、こと「UX」においても同じです。
結論、どこで生きるのか
競争の激しい場所(マーケット)では、それだけ競合も多く、投資される金額も膨大になるため、求められる「UX」水準も高くなります。
「UX」で差をつける難易度が、かなり高いとも言えますし、競合よりわずかでも劣っていると、すぐに不満や物足りなさになってしまいます。
逆に言えば、他があまり目をつけていない分野や部分で「UX」を向上させれば、わずかな投資や努力でも、すぐに優位性を獲得できます。
もしあなたが、GoogleやMicrosoft、Amazonと戦う気がないのなら、彼らが投資しない、でもあなたのお客さんにとっては価値のある場所で、「UX」に磨きをかけつづけることが、生き残りの鍵になりそうです。
同じ投資をするのでも、どこでUXを高めるのかが、生き残りを左右する