科学の進歩から考えるUXの進歩予測
2021.07.21

科学の進歩から考えるUXの進歩予測

 問題です。科学やテクノロジーの進歩、そして普及に、不可欠なものはなんでしょうか?

(シンキング・タイム)

アイデア? 情熱? 不満や不便? もちろんそれらも大切ですが、絶対に外せない要素があります。

そう、「予算」です。

漫画家と科学者の憂い

 漫画家の山田玲司さんが、あるときこんなことを言っていました。

「漫画家は、好きな漫画を描ける職業じゃない。いま売れる漫画を描かせてもらえる職業だ」

なるほど金言です。ぼくも出版に向けて動いているなかで、作家も「伝えたいことが書ける」わけじゃなく、「いま売れそうなものが書ける」職業なのだと痛感しました。

未来をつくっている科学者にしても、事情は同じ。科学者も、研究したいことが研究できるわけじゃなく、予算がつくものが研究できます(そこに、自分のやりたいことを、ねじ込むわけで)。

この認識は、とても重要です。

なくなる職業、なくならない職業

 近い将来なくなる職業、という一覧や記事を、あなたも目にした事があるかもしれません。

そこには、医師(診断)や税理士、スポーツの審判、タクシードライバーといった、極めて専門性の高い職業から、身近な職業まで、ほとんど全部じゃないかと言いたくなるほど、たくさんの仕事が挙げられています。

共通するのは、創造性よりも、多くの事例をベースとした高度な判断が求められる、という点。これこそ、膨大な教師データの吸収と解析という、AIの得意分野ですから。

でもそのなかで、同様に膨大な知識と経験、判断を必要とするにもかかわらず、AIに代替されない(代替されづらい)職業があります。

考古学者です。

市場がないから安泰という矛盾

 条件は同じなのに、なぜ税理士はロボットの仕事になり、考古学者は人間の仕事でありつづけるのか?

もうおわかりですよね。そうです、「予算」の問題です。

マーケット(市場)が大きいところほど、投資対効果(リターン)が期待できるので、国家も、企業も、予算をつけます。優秀な人材を投入し、イノベーションを起こそうと躍起になります。

一方で、マーケット(市場)が小さく場所では、仮にテクノロジーによって飛躍的な進歩が見込めても、投資対象とはなりません。

このことは、こと「UX」においても同じです。

結論、どこで生きるのか

 競争の激しい場所(マーケット)では、それだけ競合も多く、投資される金額も膨大になるため、求められる「UX」水準も高くなります。

「UX」で差をつける難易度が、かなり高いとも言えますし、競合よりわずかでも劣っていると、すぐに不満や物足りなさになってしまいます。

逆に言えば、他があまり目をつけていない分野や部分で「UX」を向上させれば、わずかな投資や努力でも、すぐに優位性を獲得できます。

もしあなたが、GoogleやMicrosoft、Amazonと戦う気がないのなら、彼らが投資しない、でもあなたのお客さんにとっては価値のある場所で、「UX」に磨きをかけつづけることが、生き残りの鍵になりそうです。

同じ投資をするのでも、どこでUXを高めるのかが、生き残りを左右する

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